TMtown TOPへ 自称日本一の更新頻度「東京ユビキタス放浪記」

実は、「マーケティング的書評」というコーナーを作ろうと思って、昨年いくつか読んだ本の書評らしきものを書いて、HTMLにもしてあるんですけど、そのままほったらかし。
何か気恥ずかしいんですよね、普通の書評って。
お子ちゃまの「感想文」みたいになりがちだし、大上段にふりかぶると、「お前は何様?」というようにも思える。
だから、放置してました。
でも、ここに来て、何冊か面白そうな本も読んだりして、「書評」というよりも、「これは人物評だよな…」というのに適当に思えたので、それをちょっと書いてみたいと思います。
1.神様ドラッカー
言わずと知れた「P・F・ドラッカー」です。
今、「哲学シリーズ(?)」が書店店頭を賑わしていますね。
結構売れているみたいで、ランキングの上位に、必ず1冊は見かけます。
おそらく、これを読まれている方も、彼の著書を1冊くらいはお読みになっていることでしょう。
ええ、もちろん私も全部…
実は、私が初めて彼の著書を買ったのは、事実上の最新著「ネクスト・ソサエティ」でした。<(_ _)>
それまで1冊も読んだことありません。
マーケティングと経営論は、似て非なるものだけど、マーケティングを知るには経営を知らなければいけない。
だから、彼の著書くらい、本来もっと早く読まなければいけなかったと思います。
しかも、かの「江副サン」は、リクルートの創業当時にドラッカーの本を読んで、感銘を受け、それをリクルートの経営に活かしたようです。
「カネだけではないモチベーション」など、ドラッカーのアイディアが元になっているようです。
自分のいる会社を操っていた創業者が、影響を受けた人なのだから、創業者の意図を知る意味でも、すぐ読むべきでした。
でも、イヤだったんですね、やっぱり。
自分達が「操り人形」であることを知るのがコワイという気持ちがあったのでしょうか。
自分達は、「最高級の営業サイボーグ」だと思っていたけれど、実はたいしたことのない木工の操り人形だった、みたいな…。
ま、薄々感づいてはいたんですけどね。
でも、会社を退職して、ちょっと読んでみようかという気になった。
それが「ネクスト・ソサエティ」。
面白かったです。
文章が簡潔明瞭で、とっても読みやすい。
翻訳本は、日本語が下手な訳者だと、読んでいて「?」ばかりになってしまいます。
例えば、アーカーの訳本は最悪ですね。
でも、ドラッカーの場合は、上田さんという方が、長年担当されているみたいで、また、ドラッカー本人とも親交があるらしくて、読んでいて、スイスイ入ってきました。
その、ドラッカーの「ベストアルバム」と言えるのが「哲学シリーズ」。
私は、最初にこれを見た瞬間、「ラッキー!」と思いました。
そりゃ、そうでしょう。
何十冊とある著書を、数冊読むだけで、そのエッセンスを吸収できる(はず)なのですから。
まさに「ベストアルバム」の長所。
「レット・イット・ビー・ネイキッド」じゃなくて、「ビートルズ1」ですね。
1ページに1テーマだから、読みやすいし、そのまま辞書代わりにもなる。
便利な本です。
おそらく、私と同じような意図をもった方が、多く買われているのではないでしょうか。
だって、引用されているドラッカーの著書のうち、最も古いものは、いつごろ刊行されたものだと思いますか?
「1939年」ですよ!
満州事変? うーむ、勝てないっすね…。
この前の選挙で、自民党の長老問題がありましたけど、彼らも筆力があれば、こうして生きていけるのにね。
せっかくですので、書評らしく、いくつか私の記憶に残ったテーマを、一つだけご紹介しますと…
「知識の結合が生産性向上の鍵」【「経営の哲学」より】
知識とは、バラバラになっていては使えないもので、それを結合させることが、生産性の向上につながるということ。
皆さん、耳が痛くならないですか?
とはいえ、全部が全部気に入ったわけではありません。
そもそも、今、一人で仕事をしている私に、「チームワーク」とか、「組織」とか言われてもカンケーないしぃ。(--;)
「リーダーシップ」もカンケーないしぃ。
この本は、大組織で働くビジネスマンには、うってつけの本かも知れませんね。
経営企画とかしている人には特に。
でも、さすがのドラッカー本も、4冊目になると、ちょっとパワーダウンという感じもしました。
ビートルズのアンソロジーだって、「3」で止まったんだから、3冊目でやめればよかったんじゃないのかな…。
この機会に「ベストアルバム」を出すということは、ドラッカーもさすがに「集大成」に取りかかっているのでしょうか。
ナチスや世界恐慌を語れる評論家には、まだまだ長生きして欲しいのですが。
2.安藤忠雄
この前の、テレビ東京系「極上の楽園」に出ていた、建築家の安藤忠雄。
最近、マスコミへの露出が、「建築家」としての範疇を飛び越えてきました。
一般に紹介されるときに、「大学で建築を習っていない」「設計事務所にも入ったことがない」という接頭辞が、必ずついてきます。
そして、そんな人が、「ハーバード大学」「東京大学」で授業を教えているということも、必ず紹介されます。
どうしてでしょうね。
やはり、日本人は、学歴コンプレックス、一流コンプレックスがあるのでしょう。
出世コースという周知のものがあって、それはビミョーにランク分けされた道になっている。
その最も優秀な進路を通ってきた人が、一番エライと。
そういう常識の正反対のところから、世界を代表する建築家が現れたものだから、そりゃ困りますわな。
また、ハーバードで教えるようになった後に、東大で教えているところが、日本の大学のバカさ加減を象徴していますね。
私も、前に「大学で教えないか」という話を、持ちかけられたことがあります。
「実務家に授業を持たせたい」という発想でね。
大学が、これ以上の「象牙の塔」にならないための対策としてです。
私も私で、「いいですよぉ〜」みたいな軽い気持ちでいたら、「何か論文とか発表されてます?」と言われました。
「実務をやっていたんだから、論文なんて書いているはずないじゃん」。(--;)
これが、日本の実態ですよ。
「権威の裏書き」がないと、挑戦できないんですな。
「実績主義」「前例主義」ともいうんですかね。
これがまた、ビジネス能力を学生に教えこむことを前面に出している大学というんだから、もう何をかいわんやですな。
さて、その安藤忠雄氏が、「連戦連敗」という本を出しています。
東大での授業をまとめた本です。
私も最近になって買ったのですが、大半は「建築」の話です(当たり前だ(^-^;))。
でも、ところどころに彼の「意志」が見え隠れしている。
「うちの事務所の若者は、現場を見る意欲が弱い」とか。
なかでも、私が「むふふ」と思ったのは、この言葉です。
「しかし、そのようなギリギリの緊張状態の中にあってこそ、創造する力は発揮される」
無名の安藤忠雄という建築家が、世に出るためには、コンペで勝つことが必要だったのでしょう。
そして、世界的に有名になった今でも、自分の立ち位置を知るために、コンペに出ているということです。
そんな彼の性分だから、事務所の20名ほどのスタッフは、年がら年中コンペに携わっている。
そして、著書のタイトル通り、「連戦連敗」の方が圧倒的に多い。
せっかくの苦労が、徒労に終わることが多いんですね。
勝率は3割くらいと書いてます。
気力溢れる若者でも、さすがにコンペ疲れがあったりすると、少し萎えてくることがある。
でも「そうじゃない」と彼は言う。
「ギリギリになってからこそが、勝負だ」と。
この言葉は、彼が心の師匠と思っているルイス・カーンという建築家の、この言葉から来ているようです。
「創造とは、逆境の中でこそ見出されるもの」(ルイス・カーン)
コラムの過去の号、「カジュアルデー」(No.003)に、似たようなことを書いたことがあります。
ちょうど4年前です。
ちょっと引用してみますと、
(略)ところで、これまで、画期的な商品を開発し、ヒットさせた人たちは、カジュアルなスタイルで考えたのだろうか。
私は全く正反対だと思う。
画期的な商品やアイデア、ひいては芸術は、「抑圧されたところから生まれるもの」だと考えている。
(マーケティング的コラム No.003 99.11.25)
生意気なことを書いていますね。
少し前に、あるメーカーの社内誌の取材を受けて、やはり「どうしたらヒット商品は生まれると思うか」という話になって、私は、「もっと追いつめなきゃダメです」と言いました。
そのご担当の方は、少々苦笑いしていらっしゃいましたが(そりゃそうだ(^-^;))、私は真剣です。
やっぱりノンベンダラリとした環境からは、いいモノは生まれないでしょう。
考えに考えて、それでもいいアイディアが浮かばなくて、ギリギリになったところで、まだ思い浮かばない。
それでもあきらめずに、考え続けていて、ある日突然、関係のないところで、ポッと思い浮かぶ。
自分が、ずっと思っていたことに、少しだけ自信を持たせてくれた本でした。
3.フジマキ兄弟
今、私が最も注目しているのは、このフジマキ兄弟。
お兄さんの方は、「元伝説のディーラー」。
弟は、「元カリスマバイヤー」。
それぞれ「元」がついているところがポイントですね。
朝日新聞の土曜特別版に、兄弟でコラムを書いています。
これが、どちらも面白い。
アニキの方は、著書を何冊も著しているくらいだから、分かりますが、オトウトまで文才があるとは…。
参りました。<(_ _)>
オトウトは、今、地下足袋で有名な「福助」の再建に駆り出されています。
これに私は、注目しています。
なぜかといえば、単なる「バイヤー」が、伝統企業の再建をできるのかと、普通は誰もが思うからです。
外国ではどうか分かりませんが、「再建劇」というと、「経営のプロ」が派遣されますね。
かつては、「銀行」が、その派遣元だった。
この前の土曜の朝日特別版の1面は、バンダイの社長でした。
バンダイの社長も、経営が傾いたところを現UFJ銀から送り込まれた。
古くは、住友銀行が、マツダ、アサヒビールを再建したことも有名です。
でも、フジマキ弟は、伊勢丹の元カリスマバイヤーです。
ファッションのプロかも知れないけれど、経営者としては…、と思いますよね。
「大学」だったら、まず登用しないでしょう(とイヤミを一発)。
フジマキ弟を、テレビなどでご覧になったことがありますでしょうか。
一見して、「人を引きつける魅力に溢れています」よね。
見てくれは、ファッションとはほど遠いように思わせておいて、その実、中身は非常に「熱い心」を持っている。
そして、正しいことを正しくできる人だと見ました。
伝統に甘えていた福助の社員を、元気づけて、それだけではなく、やる気も出させて、しかも売上を急回復させる。
これは並大抵のパワーではできないはずです。
でも、この前取り上げていたテレビでは、(テレビの前だからかも知れないけれど)社員は「やる気が出てきた」と言ってました。
顔つきからすると、まんざら社長へのお世辞でもなさそうです。
これまでやってこなかった女性の登用、それも20代の女性を役職に起用したりするなど、硬直化した社風に風穴を、バシバシ空けているようです。
フジマキ弟さんには、是非「成功」していただきたいんですよ。
これまでの企業再建というと、どうしても「うしろめたさ」がつきまとっていた。
でも、彼は違う。
彼はネアカです。
過去の再建劇とは、ひと味も二味も異なる再建をしてもらって、日本に新しい風を吹かせて欲しいのです。
近々出される本も買いますので、是非頑張ってください。<(_ _)>
そして、アニキの方。
アニキの最初の著書「外資の常識」という本は、まさに今、読んでいます。
この本が売れていることは知っていました。
「伝説のディーラー」という人が、いることも知っていました。
私自身、金融を勉強することは、半ばライフワークと化していて、それならばこの本は必読だったでしょう。
では、なぜ読まなかったか…?
それは、「外貨の常識」だと思っていたからです(本当)。
いいですか、「外資」じゃなくて、「外貨」です。
字が似ているでしょ。(^▽^;
だって、「伝説のディーラー」が書いた本ですよ。
たしかに、JPモルガンという「外資系」にいたのですが、「伝説のディーラー」が書く本なら、「外資系」のことを書くというより、「外貨」について書くと思った方が自然でしょう?
で、私は、本屋の店頭で、この本をちらっと見て、「あ、オレにはカンケーない本だな」と一瞬で判断していました。
いくら、金融のことを勉強しているといっても、外貨はねぇ…、訳が分からないですから。
それが、最近になって、このフジマキ兄の名前を、本屋でやたらと見かける。
日経の文庫になっていたんですね第2著が。
最初見たときは、あのフジマキ兄だと分かりませんでした。
だって、本のタイトルを見たときに、今度は「タイヤキのマーケットはシッポにくれてやる」と思ってしまったので…(本当)。
またぞろ出版された怪しげなマーケティング本だと思ってました。
「タイヤキの市場を、さまざまなことに例えながら、マーケティングを語る」という感じのね。
まあ、「モー娘。の経済学」みたいなものでしょうか(爆)。
でも、ある日よく見たら、本のタイトルはそうじゃない。
「タイヤキのしっぽはマーケットにくれてやる」でした(汗)。
で、文庫本だし安いから、即決で買いました。
読んでみたら、どちらも面白いっすねぇ…、表紙の似顔絵は、全然似ていませんけど。
彼の本は、前著もそのように評論されているみたいですが、経済本でも、ましてや金融本でもなく、単なるエッセイです。
でも面白い。
なぜ面白いかというと、自分のミスをさらけ出しているからですね。
外資のディーリングで19連勝もしたら、そりゃカネ持ちになるのは当たり前だろうし、今は悠々自適のイヤなヤツ、そう思われるのは普通でしょう。
本人も、モルガン時代は、「車の送迎で通勤していた」と言っていますから、十分イヤなヤツに入るはずです。
汗水たらして働いているサラリーマンから見ればね。
でも、フジマキ兄は、何というか(自分でも書いていますが)普通のオジサンなんですね。
いや、もしかしたら、最近では、普通以下のオジサンに、ランク分けされるかも知れません。
その辺が、愛される由縁なのでしょう。
自ら流していたFAXニュースの「付録」により、海外の金融界でも有名になるほどの、部下と長男のハチャメチャな言動とともに、「外資系も面白いね」と思わせてくれます。
もちろん、その前に、相当厳しい世界なんですけどね。
さて、このフジマキ兄の方は、かのジョージ・ソロスに切られて以来、プータロー的な生活のよう。
大学で教えたり、執筆をしたりという日々のようですが、こういう人が、「金融庁長官」になれば面白いと思うのですが、いかがでしょう。
いや、半分マジで。
竹中さんや榊原さんよりも、よっぽどチャーミングで、面白いと思うんですけどね。
「チャーミングさ」は、昔も今も、トップに重要な資質です。
(ということを、ラグビーの故大西鐵之祐が言っていたそうです)
まあ、フジマキ兄みたいな人が、本当に金融界のトップになったらなったで、みんな右往左往しちゃって、仕事にならない日々になるのかな。
もっとも、今の金融界だって、たいした仕事をしているわけでもないのだから、変わらないと思うんですけどね。
同じだったら、面白い方がいいじゃないですか。