No.132
新製品解剖 あさげ/ポケットドクター/アコード
2002.10.21
1.永谷園あさげ
永谷園が、インスタントみそ汁のはしりと言ってもよい「あさげ」のドライタイプを発売してきた。
テレビCMも、かなりオンエアしているようなので、かなり力を入れている様子。
しかし、インスタントみそ汁のチープ感を払拭するための「生みそタイプ」だったはずなのに、なぜ今頃、「ドライタイプ」なのだろうか。
永谷園の「みそ汁」の歴史は、意外と古い。
実は、「あさげ」以前に、「赤だし」というドライタイプが発売されている。
発売年度は、なんと1967年。
その後、「あさげ」(ドライタイプ)が1974年に発売され、有名な柳家小さん師匠のCMで、一躍ヒット商品となったことは、改めて紹介するまでもないだろう。
永谷園が「生みそタイプ」を発売したのは、1983年である。
このときには「あさげ」ブランドを使用せず、「みそ蔵」という別ブランドを立てて、「ほうれん草入り」で、具がたくさん入っていることをベネフィットに発売している。
これがどこまでヒットしたのかは覚えていないが、その後、1985年に「あさげ」の「生みそタイプ」を発売したところをみると、少なくとも不評ではなかったのだろう。
そして、ここ数年は、「生みそタイプ」が定番化し、「具だくさん」から、さらに「減塩」へと、その時々のトレンドを捉えた商品をヒットさせている。
このように、たかが「インスタントみそ汁」だったものを、より「本物」に近づけてきた歴史を、あえて逆行する仮説は、いくつか考えられる。
この「ドライタイプ」は、写真のように、みそ汁のフリーズドライがパックにそのまま入っている。
最大のベネフィットは、パッケージにあるように「20杯分」飲めるということだろう。
ちなみに、価格は「238円」(渋谷のスーパー、「ライフ」にて購入)。
「生みそタイプ」の「あさげ」は、「3食入りで100円」だった。
1杯あたりの単価は、
ドライタイプ:238円÷20杯≒12円
生みそタイプ:100円÷3杯=33円
であり、当然のことながら、ドライタイプの方が、圧倒的に安い。
「デフレ時代」に合わせた発売ということが、まず言えると思う。
しかし、これだけではないだろう。
パッケージには、「サッと溶けて サッとおいしい ササッとあさげ」「いつでも、どこでも、お好みでいろいろ使えて簡単便利」とも書いてある。
今さらとも思えるようなことを、あえて訴求するのには、理由があろう。
これはひょっとして、「生タイプは作るのが面倒くさい」という声が、少なからず出てきたのではないだろうか。
「生タイプ」のみそ汁は、本物のみそ汁に限りなく近づいている。
もちろん、本物とは違うところもある。
しかし、一人暮らしなどで、みそ汁を作ることを知らない人間にしてみれば、もはや「生タイプ」がそのまま「みそ汁の味」となっているはず。
その「生タイプ」に、すっかり慣れてしまった最近は、「生タイプ」すら作ることが面倒と思う人がいてもおかしくはないだろう。
(かくいう私も、自分で生タイプを飲む時には、少し面倒だなと思うことはある)
そんな人のために、「ドライタイプ」が復活となったのではないか。
最後の仮説は、今のものと全く正反対の仮説である。
この「あさげ」の裏面には、いわゆる「メニュー提案」もある。
それも、この「あさげドライタイプ」を使えば、「さばの味噌煮」も簡単に作れるという提案である。
「生みそタイプ」を作るのが面倒と思う人が、よもや「さばの味噌煮」を作るとは思えない。
では、誰を狙っているのかというと、それは「主婦層」だろう。
1杯分、わずかに12円というのは、主婦にとって魅力に映る。
ただ、魅力といっても、「12円」という絶対的な安さにではなく、「生みそタイプ」に比べての相対的な安さにだろう。
私は、「さばの味噌煮」が作れないので、「あさげ」を使うことによって、どれだけ便利になるのか分からないが、「みそ」だけでなく、「だし」の成分までフリーズドライに入っているため、微妙な味付けがラクになるのだろうか。
ただ、それでも「砂糖」や「生姜」は用意しなければいけないので、そこまでする人なら、「さばの味噌煮」くらい作るのは、面倒がらないと思うのだが。
この結果は、この「あさげ」が、コンビニとスーパーのどちらで売れるのかを見れば、一目瞭然だろう。
でも仮に、スーパーの「目玉商品」になるようだったら、「ついに主婦もここまできたか」とも思ってしまうのであるが。
2.コカ・コーラポケットドクター
さる9月に、コカ・コーラから発売された「ポケットドクター」。
テレビCMには、元TBSアナウンサー鈴木史朗をドクター役として起用している。
発売キャンペーンには、今をときめく長谷川京子を呼び、体力測定をやらせていて、なかなかの力の入れようだった。
この「ポケットドクター」のコンセプトは、
「健康不安を抱える現代人のための手軽でおいしい"カラダ先行投資飲料"としての機能感、効果感、信頼感を表現しました。」(コカ・コーラ社ホームページより)
とあるが、この商品が、「サントリーDAKARA(ダカラ)」が拡げたマーケットを狙った商品であることは、言を待たないだろう。
「ダカラ」は、「体に不足しているものを摂取し、余分なものを取り除いて、体のバランスを正常にする」ことがコンセプト(サントリー社ホームページより)。
ポケットドクターは、「先行投資飲料」としており、同じような内容ながらも、論点を微妙にずらしていることが分かる。
ポカリとアクエリアスが、「スポーツ飲料」のイメージで売っているところに、より日常生活に即したポジションで、ダカラが参入し、シェアを奪い取っていった。
コカ社としても、ポカリに対抗するために、アクエリアスのポジショニングをずらす訳にはいかない。
そのため、より健康機能に特化したことを鮮明に打ち出した「ポケットドクター」を発売し、ダカラを迎撃するつもりなのではないか。
さて、この「ポケットドクター」の最大の特徴は、「保健機能食品」であることである。
「保健機能食品制度」は、平成13年(2001年)4月に施行されている。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0313-2.html
それまでは、一般の食品と医薬品の中間のものとして、「特定保健用食品」があった。
「特定保健用食品」とは、
「身体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える保健機能成分を含み、食生活において特定の保健の目的で摂取をするものに対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品」(厚生労働省サイトより)
のこと。
分かりやすくいえば、「医薬品ほど効果効能は保証できないが、一般の食品よりは効果がありそうなもの」という感じか。
しかし、これを販売するためには、「個別に生理的機能や、特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する国の審査を受け、許可(承認)」を受けなければならない(引用同)。
要するに、かなり面倒なのである。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0313-2a.html
この面倒な制度を、少し緩和し、一定の規準を満たしていれば、国の認可や届出の必要がなく販売できるようにしたのが、「栄養機能食品」である。
厚生労働省としても、乱立する怪しげな(いわゆる)「健康食品」について、消費者が安心して選択できるように、配慮したということだろう。
「ダカラ」の発売は、2000年3月なので、まだこの制度が施行される前なので、もちろん「栄養機能食品」とはうたっていない。
一方の後発となる「ポケットドクター」は、単なる清涼飲料水としてでは、「ダカラ」に勝てないので、この制度を巧みに利用し、ベネフィットを訴求してきたのだろう。
ところが、実際には、この「ポケットドクター」は、我が家の近所のセブンイレブンでは、「野菜ジュース」などの近くに置かれている。
缶の高さが、300mlサイズのためもあるのか、500mlサイズが主流の「スポーツ飲料」の棚とは別なところに置かれているのである。
このことは、コカ・コーラ社の思惑と一致するのだろうか。
「栄養機能食品」にしたばかりに、本来競合すべき商品と、別の棚に置かれる。
「健康系の棚」では、目新しさが出てよいのだろうが、そもそもコンビニで「健康すぎる商品」が売れるのか、やや疑問である。
この「ポケットドクター」。
今のところ、売れているという評判は、あまり聞こえてこないが、今後のCM訴求とともに、棚割りが変わっていくのかにも注目してみたい。
3.ホンダアコード
小型車フィットで、カローラの長期政権を、ついに奪取しそうなホンダが、ここにきて、ホンダを代表するセダン「アコード」の新車を発売してきた。
http://www.honda.co.jp/auto-lineup/accord/
今年3月の日産マーチ発売以来、トヨタもイストを発売し、さらに日産もキューブのモデルチェンジを図り、小型車市場は、ますます混沌としてきている。
そこへ、あえて「セダン」を投入してきたホンダの思惑とは、何なのだろうか。
アコードについては、私も過去2代の車種(初代と2代目)に乗ったことがあるので、どうしても公平な目で見られない。
そして何より、ここ数世代のアコードのデザインが、好きになれなかった。
「個性」が、全く感じられないデザインのため、買おうという気すら起きなかった。
今度のアコードのデザインも、今ひとつ好きではない。
最初にテレビで見たときに、「驚き」や「ワクワク感」は、全く起きなかった。
しかし、それ以上に、今度のアコードが注目すべきなのは、「HiDS(ホンダインテリジェント・ドライバーサポート・システム)」と名付けた最先端の機能を、これでもかというほどに盛り込んできたことだろう。
これまでにも、トヨタのセルシオなどの高級車に、ITS(高度道路情報システム※)を予感させる機能が盛り込まれたケースはあった。
※前を走るクルマに接近すると、自動的に減速し、車間を調節する機能。
しかし、アコードのような「大衆車」に、このような機能を盛り込んできたことは、本格的なITS時代の到来を告げるものといってよいだろう。
このアコードを、ホンダの本社1階にあるショールームで見た。
デザインは、やはりダメ。
フロントグリルが、気に入らないし、リアのデザインも気に入らない。
アコードなのに、「格好つけすぎ」という感じが、嫌いな点だ。
「普通に乗りたいクルマ」は、デザインももっと「普通」でいいのに、と思う。
最近ありがちな、流体力学を駆使し、少しでも燃費をよくするためのデザインのようだが、そこまで「デザイン」と「燃費」を関連づける必要性は、私はないと思う。
毎日必ず、時速100キロで走るクルマであれば、経済性も無視できず、そのようなデザインも必要なのだろう。
しかし、週末に街中で渋滞に巻き込まれながら走るだけのクルマに、流体力学も何もないだろう。
いくら「エコ時代」とはいえ、この手のデザインは、開発者の自己満足が、すぎているだけのようにしか、私には思えない。
運転席に座ってみると、インテリアのデザインは普通。
純正品のDVDカーナビがついているが、驚いたのが、その下にあるもの。
DVDを入れるスロットの下にある、「PCカード」のスロット。
PCカードを使えば、ソニー系のメモリースティックでも、パナソニック系のSDメモリーカードなど、さまざまなメーカーのメディアに対応できる。
新しい保存メディアは、メーカーの思惑ばかりが先行して、まだ「業界標準」が固まっていない。
ソニーも、松下も、自社のことしか考えていないようで、消費者は混乱するばかり。
実際に、ソニーとパナソニック、それぞれのカーナビは、自社メモリーカード対応スロットしかついていないものが多い。
http://www.sony.jp/products/me/contents/navi/ms_navi/index.html
(ソニー製カーナビ)
http://www.mci.panasonic.co.jp/aced/navi/products/HD9000/index.html
(松下製カーナビ)
しかし、その企業どうしの勝手なケンカを、PCカードが取り持ってくれれば、消費者も安心して、保存メディアを選択できる。
「PCカード」が業界標準となってくれれば、この手の問題を解決してくれそうである。
どちらかといえば、「ソニー寄り」といえるパイオニアは、「PCカード」にしていることから、無用なケンカを避けたというところか。
この選択は、最も妥当なのかも知れない。
http://www.hdd-cybernavi.com/products/index.html
さてこの「アコード」、どのくらい売れるのだろうか。
何とも想像しにくいところである。
ホンダの発表では、月販5000台としている。
http://www.honda.co.jp/news/2002/4021010-accord.html
しかし、これは体のいい取り繕った数字だろう。
最低でも、初月8000台、このくらいいかないと格好がつかない。
できれば、ステップワゴンがモデルチェンジしたころの販売台数12000台に、少しでも近づけて、勢いをつけたいのが本音のはず。
ホンダとしては、アコードがどのように評価されるのかで、今後の販売動向に大きく影響してくる。
なぜなら、これだけ「小型車が売れている」という状況で、あえてホンダのセダンの看板車である「アコード」を出してきて、それで売れるようなら、クルママーケットの実権はホンダが握ってしまうこと。
トヨタや日産が、小型車の販売に夢中になる中で、一人「中型車」を売り、仮に消費者の流れを中型車に変えられたら、トヨタも黙ってはいられないだろう。
でも、そんなに簡単にいくものだろうか。
私自身、ステップワゴンに乗って、丸6年。
そろそろクルマを買い換えたいと思いつつ、今さら「セダン」に乗り換えるのは、少し勇気がいる。
「勇気」というのは、「狭さに対する勇気」。
この前、運転席に乗った限りでは、「やっぱり狭いな…」という印象。
せっかく苦労して買った3LDKのマンションから、わざわざ2DKに買い換えるなどということを、多くの人がするのだろうか?
ワンボックス車のメリットは、何も車内でゆったり過ごせることだけではなく、「安全性」に対するメリットが大きいこともある。
そのメリットを捨ててまで、わざわざ「危険」なクルマに買い換えるというのは、それ相応のメリットがないとダメだろう。
今のアコードには、そこまでのメリットがあるのか?
「マーチ」が発売された頃に、ワンボックスからの買い換えが多いという記事を、どこかで読んだ。
これもにわかには信じがたい部分もあるのだが、それでも「経済的な理由」ということで、何とか説明はつく。
しかし、「アコード」の車両価格は、「ステップワゴン」とほとんど変わらない。
http://www.honda.co.jp/auto-lineup/accord/pricerange/index.html
(アコード価格帯)
http://www.honda.co.jp/auto-lineup/stepwgn/pricerange/
(ステップワゴン価格帯)
それでもなお買い換えるというには、この新アコードの先進性に惚れ込む以外に、理由はありえない気もする。
はたして、アコードの最先端機能の数々は、消費者の心を捉えることができるのだろうか。
ホンダの吉野社長も、発表会でのインタビューは相当気合が入っていた。
それはそうだろう。
フィットが、ついにカローラの牙城を崩し、オデッセイ、ステップワゴンと築いてきたミニバン・ワンボックス市場が過渡期となった今、セダンのアコードが売れてくれる意義は、何よりも大きい。
トヨタに追いつくには、まだまだ遠いものの、日産、そして三菱を引き離すには、これ以上の戦略はないはず。
仮に失敗すると、「ホンダは小型車とワンボックスカーの会社」と見られてしまい、世界に伍する自動車会社のイメージ戦略としては、あまり好ましくないものとなる。
アコードの販売動向は、ホンダの命運だけではなく、クルママーケットの今後数年を占うといったら、言い過ぎだろうか。
ただ、そのくらい注目すべきものだと思う。