十日目: ACマスターカードの運命


「電子マネー」、一言で言ってしまうと、具体的に何を指すのかわからなくなってきますが、ここにきて急に「デビッドカード」をはじめ、さまざまな電子カード(?)が出てきました。
でも、今回のテーマは、電子マネーではありません。このような中、5月に、「アコム」が「マスターカード」と提携して、「ACマスターカード」なるものを出してきます。これは、簡単に言いきってしまうと、「銀行の残高を気にせずに、カードでの支払いができるクレジットカード」です。
さて、さまざまな電子マネーも登場しつつある中で、このような「消費者金融会社」と「クレジットカード会社」の提携カードは、どのような運命をたどるのでしょうか。そして、「消費者金融会社」の役割は、どのようなものとなっていくのでしょうか。
いずれにしても、誰が考えても、「恐ろしいカード」であることには違いがありません。今回は、短期的な受容性ではなく、長期的な視点に立って考えてください。ちなみに、「プロミス」と「JCB」も提携している(これからする?)はずです。

本当に「恐ろしいカード」です。許可されるんですねー。こういうカードが。

「消費者金融会社の役割」は今までの信用金庫などに代わって、町の中小企業に資金援助をしていくことだと考えています。そこから発展して、担保がなければ貸さない銀行の代わりに、優良なベンチャー企業を支援し、育てることも重要な役割ではないでしょうか。
しかし、個人向けのカードとなると、正直言って「役割」のイメージが浮かびません。クレジット会社との連携となると、手数料などの美味しいところだけを奪われ、金の取り立てなどダーティーな部分だけが残るような気がします。
いずれにせよ、銀行をバックにする通常のカードを使えない人が手を出すカードといった印象です。

長期的な視点に立つと、なんとなくイメージが浮かぶ気がします。要するにサラ金から銀行になろうとしているのではないでしょうか。というよりは、個人も企業と同じに考える発想の転換というべきでしょうか。

預けた金から使った分を引き出す「銀行」と、使った金を返していく「消費者金融」と、お金の動きが、マイナス発想かプラス発想かだけで、どちらも大きな違いはありません。であれば、預かった金を運用する難しさよりも、最初に金を出しておいて、回収する方がはるかに簡単に利益が出ます。

今まで銀行は、企業には、お金を貸した利ざやで稼ぎ、個人は、預かった金を運用して稼いでいました。
しかし、運用で利益を出すことが難しい現在、貸した利ざやを得る方が効率的です。その企業向けの発想を、個人に応用したのではないでしょうか。

普通の個人は企業と違って、お金を直接借りに来ることはあまりしないでしょう。そこで、クレジットカードです。
クレジットカードであれば、消費者金融から金を借りるという後ろめたさも、あまり感じずに、お金を使うことができます。であれば、今まで以上に個人向けの市場を広げることができるのです。

ただ、これは企業側からみた視点で、消費者の側からみたらどうでしょう。果たして消費者金融のカードをどれだけの人が作るでしょうか。現在でも、ある程度の額ならクレジットカードで借りることはできます。そして、それを小額ずつ返済することも可能です。

個人の消費者にとって、今までのカード以上のメリットは何でしょうか? そこがどうしても考えつきません。メリットがあるとしたら、カードが作れない人やカード地獄にはまっている人など、特殊な危ない人しか考えられません。
一般消費者に何をもたらすのでしょうか。

それとも、今はバックが銀行でも消費者金融でも、預けるのが先だろうが、使うのが先だろうが、あまり意識をしない人が増えているのでしょうか。

一消費者として、あくまでも平均的な目で、客観的に考えてみると、誰でも「どうしてサラ金とクレジットカード会社なの」と、その組み合わせの意外さに気付くでしょう。消費者金融会社からすれば、「こりゃ渡りに舟だ」でしょうが、では、「マスターカード」は、「アコム」のどのような能力に期待して、提携したのでしょうか。
これは、大手の消費者金融のいずれにも言えることですが、銀行と消費者金融の能力で、最も異なるのは「与信能力」です。
「与信」とは、「個人に信用を与える」こと。つまり、信用できると考えた人に、きちんとお金を貸すことです。今更言うまでもありませんが、都銀をはじめとして、バブルに踊った金融機関は、結局、この「与信能力」がなかったと言ってよいでしょう(対象が、個人であれ、法人であれ)。

消費者金融業が、今のような時期に、比較的好業績を残せているのは、単に金利が、史上最低水準であるからというばかりではありません。
過去の幾多のバッシングを経たことにより、与信に関して、極めて高い経営努力をしてきた、ということも理由にあげられます。そして、カード会社にしてみると、自分たちは、「支払いの肩代わりをすること」には長けているが、それはあくまでも、物品購入やサービスの対価としての肩代わりであって、「個人を見極める能力ではなかった」と考えたのではないでしょうか。
カード会社も、その売上を伸ばすとなると、個人消費が低迷しているのだから、現状では「パイを拡大する」しかない。
とはいえ、今まで、カードの基準で落ちていた人に、やみくもにカードを与えるのは危険だ。では、そのあたりのターゲット層が得意そうな消費者金融と組んで、カードを出せば、カード利用も高まるのでは…。これが、カード会社が考えた筋書きではないでしょうか。

欧米では、個人がお金を借りることについて、日本人ほど抵抗がないと聞きます。仮に、日本人の意識が欧米並みになってくると、案外、この「ACマスターカード」の方が、はやるかもしれません。その理由としては、「何かあったときのサービス」が、「電子マネー系」よりも手厚いものが得られそうということです。

カード会社、特に欧米系カード会社の顧客サービスの手厚さは、日本の会社に比べると、天地ほどの開きがあります(実体験からも)。これは、実際に体験してみないと分からないことでもあるので、そう簡単に理解が広まるとも思えませんが、逆に、銀行系のカードなんて、「貸すときばっかりニコニコ顔で、自分が困っているときには無愛想」という感じがしませんか。
いずれにしろ、この勝敗は、金利や利便性よりも、「困ったときのサービス」にキーがあるような気もします。

そして、消費者金融会社の目指すは、銀行ではなく、「総合個人金融サービス業」ではないでしょうか。事業系金融よりも、「個人の金の出入りに関係するサービスをすべて取り扱う」、カード会社のノウハウをうまく吸収できれば(これが簡単ではないだろうが)、夢ではないと思うのですが。

★もとより、事業系金融では、(まじめな)信金などもあるうえに、「日栄」等の中小企業金融が業績を伸ばしているため、消費者金融がこれから参入していくこと自体、厳しいのではないでしょうか。

 

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